青い鳥

アール・デコ挿絵本の魅力を思いつくまま

2020-01-01から1年間の記事一覧

“ Meilleurs voeux ”   “ クリスマスと新年のお慶びを申し上げます ”

画像はマルティ夫妻のプライベートなクリスマスカード兼年賀状です。どれも13cmX11cmくらいのリトグラフや銅版画で “ 小さいものの巨匠 ” らしい魅力にあふれています。このカード、限定私家本に付いていることが時々あるので、オマケとしても使われたのでし…

“ ミュッセの主人公 ”  イリュストラシオン1931年クリスマス号

上段 : 原画(オフセット印刷) / 下段 : ポショワールによる挿絵 ミュッセ全集ピアッツァ社の「マルティ挿絵版ミュッセ全集」が刊行される直前、絵入り新聞イリュストラシオンの1931年クリスマス号に「ミュッセの主人公について」という記事が載りました。タ…

" 召喚 " されたルネッサンス美女たち    「バーデンの浴場」G.バルビエ

上段 : バルビエ挿絵「バーデンの浴場」/ 下段 : 左3点 クラナッハ、右端 ラファエロバルビエのファイルには時空の異なるたくさんの様式がストックしてあったに違いありません。テキストに合わせて自由に様式を選び、イメージのおもむくままにバルビエワール…

" 愛書家クラブ " という贅沢

上段 : 湯川72倶楽部、1986年刊 村上春樹 「中国行きのスロウボート」 / 下段 : ラテンアメリカ愛書家協会、1926年刊 ジェラール・ドゥーヴィル 「誘惑者」 A・E・マルティ挿絵 挿絵本の発行元として時折 ” LES BIBLIOPHILES DU ~ " と記されていることがありま…

アールデコの女王 タマラ・ド・レンピッカ

ポートレートはタマラ自身。自分がポーズするほうが好きだった? 近現代の絵画史を一文で教科書風にまとめると「19世紀、新古典派とロマン派のせめぎ合いの後、印象派が台頭し、20世紀に入ってキュビズム、フォービズム、シュールレアリズム、抽象派が活躍す…

熊川哲也 Kバレエ カンパニー " 海賊 "

画像はKバレエ カンパニーの公演パンフレット 現代日本のディアギレフ熊川哲也率いるKバレエ カンパニーが、春以来延期を重ねた末にようやく公演再開を果たしました。タイトルは"海賊"、古典レパートリーとしては珍しく男性ダンサーが活躍する演目です。半年…

アールデコを彩った " ポショワール " その2

ポショワール+フォトタイプ印刷 : 左から「ある子供の物語(オールテキスト部分)」「シルヴィー」「至高の青春 & ある貧しい将校」 ポショワール+ヘリオグラビア印刷 : 左から「静観詩集」2点、「ある子供の物語(カット部分)」 ポショワール+線画凸版?…

アールデコを彩った " ポショワール " その1

ポショワール+木口木版(スミ版): 左から「フローラの王冠」「ミュッセ全集」2点 ポショワール+木口木版(色版) : 左から「雅歌」「エレーヌのソネット」「カサンドルの恋歌」 ポショワール+エッチング : 「誘惑者」3点とも。 ポショワールはアールデコ…

知られざるアーティスト          アンドレ・ドマン「悪の華」

今でこそファンの多いアールデコ挿絵本ですが、日本で知られはじめたのはせいぜいここ十数年ではないでしょうか。 鹿島茂氏は1993年に出した「バルビエコレクションⅡ ビリチスの歌」で自著を「ビリチスの歌(バルビエ挿絵)の初紹介」と述べています。また荒俣宏氏…

挿絵本を創るもう一人のアーティスト

ペア画像の左が原画、右が挿絵。 上段から「誘惑者」、「ウルスラ・ミルーエ」、「愛のしずく」。 原画 A.E.マルティ アール・デコ挿絵本の魅力の一つは、挿絵が印刷ではなくポショワール、エッチング、リトグラフといったいわゆる版画であることです。中でもポショ…

フランスからの郵便・宅配事情

(本当に宅配無法地帯?) フランスの宅配事情についてはネットにたくさん記事が上がっています。多くは日本から送った荷物の遅配、誤配、破損などで、それだけを見ているとフランスはまるで宅配無法地帯のようですね。確かに配達段階ではいろいろ問題があるの…

「子供のための8つのシャンソン」             A.E.マルティ

#アールデコ #マルティ #楽譜集 #製薬会社のノベルティ かわいいオマケですね。 この作品は子供向け薬用シロップの販売促進用に作られた歌曲集です。すでに知られていた8つの詩にオリジナルの曲がつけられています。作曲家C.A.P.リュィサンは調べてみてもあ…

異界の演出家 G.バルビエ

上段 影のない世界の人々 「艶なる宴」 下段 不思議なクリーチャーたち 「バーデン - バーデンの湯治場」 バルビエの描く世界に光と影はありません。いや光は確かに存在するのですが、強く射して影を作ることはなくあたりを漂うかのようです。そして絢爛たる色彩…

光と影の巨匠 A.E.マルティ

上段「逆光の幸福感」/ ウルスラ・ミル―エ、子供の物語、ミュッセ全集、シルヴィー、エルネスティーヌ 下段「美しい夜の情景」/ 青い鳥、アフロディテ、雅歌、シルヴィー、サッフォー オークションを見ていると、どうやら日本でのアール・デコ挿絵本の一番人…

ファッションプレートになった       「お菊さん」と「お梅さん」 S.ソヴァージュ

シルヴァン・ソヴァージュはなかなか器用な画家だったようです。「青髭と七人の妻」に見られる力強くユーモラスな木版画がよく知られていますが、ロスタン全集の「鷲の子」では小さなカットを手堅くこなして、フルページ挿絵を担当したマルティの引立て役に廻って…

もう一人のビリティス 「ビリティスの歌・完全版」 G.バルビエ

アールデコ挿絵本の女王「ビリティスの歌」に別バージョンが存在することは、ファクシミリ版(復刻版)の案内メールで初めて知りました。 で、2週間がかりで送られてきた「ビリティスの歌・完全版」(ファクシミリ)を手に取った印象はというと「とてもチャ…

一家に一本ピエール・ドゥ・ロンサール      「愛の詞華集」A.E.マルティ

#ピエールドゥロンサール #ピエールドゥロンサール と#ギーサヴォア ルネッサンスの宮廷詩人にちなんだ名のバラがあります。毎年この時期に色気のある大輪を惜しげもなく咲かせる名花で、バラファンの間では「一家に一本ピエール・ドゥ・ロンサール」と揶揄さ…

挿絵本のラスボス現る⁉ 「ビリティスの歌 真正・完全版」G.バルビエ

全世界が鎖国している中、商売熱心な古書店はWebカタログをいつにもまして頻繁に配信してきます。店を閉めている分ネットで頑張ろうという思惑でしょうが、その割に値段はあまり下げていないのがフランスらしいところです。 そんな中、稀少本のファクシミリ…

世渡り上手なアール・デコの寵児 「マズリパタンの王様」U.ブルネレスキ

古書の世界で「アール・デコ挿絵本」は定着した呼び名ですが、必ずしも「名」が「体」を表しているわけではありません。二大巨匠であるバルビエとマルティは流行としてのアール・デコスタイルを超えた独自の画風をつらぬきました。また、マルティの最後の挿…

幻の「ルネ・ラリック展」

東京都庭園美術館の「ルネ・ラリック展」はコロナ騒ぎで中断したまま終了してしまいました。開幕早々に出かけなかったのが悔やまれます。ラリック好きの日本には専門美術館やコレクションがたくさんあって緊急事態でなければいつでも見ることができますが、…

バブルの甘い香り「香水のロマンス」G.バルビエ

時節柄、不要不急の外出を自粛する週末は浮世ばなれした挿絵本でも眺めて過ごしますかね。考えてみれば豪華挿絵本こそ「不要不急」の最たるもので、なくても日常生活には何ら不都合はありません。不要不急で限りなく美しいものは世の中によほど余裕(心かお…

"JAPON" アズ ナンバー ワン「神話の情景」A.E.マルティ

アールデアールデコ バブルニッポンの自尊心を大いにくすぐった経済書「ジャパン アズ ナンバーワン」は遠い思い出になってしまいました。 一方、100年以上にわたって日本が世界の頂点に君臨するとてもニッチな分野をご存じですか? 答えは高級限定本の用紙…

インバウンドこと始め 「日本散策 東京ー日光」 フェリックス-レガメ挿絵

アール・デコ期からさかのぼること50年、フランスはリヨンの大ブルジョア紳士が画家を伴って明治初期の日本を訪れています。名はエミール・ギメ。有名なギメ東洋美術館の創始者です。 大ブルジョアに似合わずフットワークも軽く、開国間もない日本を楽しんで…

素手で楽しむ「ビリティスの歌」G.バルビエ

コレクターで富裕層でもあるあなたが、ある日アール・デコ挿絵本の最高峰「ビリティスの歌」を買おうと思い立ちます。買うのは難しくありません。このクラスの超高価本は意外によく市場に出ます。現に今も560万で市場に出ています。 ただし買う前に必ず高断…

アールデコ挿絵本の「オマケ」

海外の古書店とつき合っていると、それぞれのお国柄が感じられて面白いです。 スイスやドイツの店は問い合わせのレスポンスも早く発送の手際もいいですが、スイスは郵送料が高くドイツは輸送の日数が不安定です。一方フランスはというと輸送の信頼性は高いで…

木口木版の暗闇 「わが友の本」A.E.マルティ

なんだか横溝正史のパロディみたいなタイトルになってしまいました。木口木版は木の切り口(年輪の見える方)を使った版画です。細かい表現が可能なうえ、活字と組んで製版できるので挿絵印刷に広く使われました。一方、高級挿絵本ではポショワール彩色の輪…

プロヴァンスの光と風 「風車小屋だより」 A.E.マルティ

マルティの「風車小屋だより」はアール・デコ挿絵本としてはめずらしく版を重ね、総数は約一万部に上りました。ほとんどが数百から多くても二千部程度で出版される挿絵本の中では、例外的な多さです。 それでもイメージが落ちることはなく、逆に数をこなすこ…

エノテカの「ワイン閣下」C.マルタン

午後、遅めのランチを取りながらふと壁を見ると、なんと「ワイン閣下」がいらっしゃるではないか!以前からよく来ているのに、あまりにインテリアにとけ込んでいるせいか永らく気づきませんでした。 「ワイン閣下」はワイン商社の二コラ社が発行した販促本で…

ブエノスアイレスのバルビエ 「ブレオ氏の出会い」G.バルビエ

コレクターにはよく知られたことですがバルビエの挿絵本はお高いです。本日もパリの古書店から「ビリティスの歌」が560万で出ています。 妖しくも美しいが一度ハマったら身の破滅というところは禁止薬物と変わりません。 もし、健全な一般人であるあなたが安…

青い「青い鳥」 A.E.マルティ

令和元年の展覧会めぐり、〆は鹿島茂コレクション「アール・デコの造本芸術」展へ。 日比谷図書文化館というジミな会場のせいか、週末というのに人影はまばら。でも内容は愛好家にとってこの上ない展覧会でした。 最大の収穫はバルビエの「ビリティスの歌」…