青い鳥

アール・デコ挿絵本の魅力を思いつくまま

バルビエ

「アール・デコ挿絵本」の本 Ⅱ フジタとマルティ

画像左から「藤田嗣治と愛書都市パリ」「藤田嗣治 本の仕事」「Marty! Marty! 1, 2」 挿絵本に限らないでしょうが、コレクションの最終盤では色々なことが起こります。テンパイ状態(あと一点)からなかなか最後の一作品に行き当たらなかったり、未知の作品が…

「アール・デコ挿絵本」の本

鹿島茂「バルビエ X ラブルール」「モダン・パリの装い」「アール・デコの挿絵本」(順に求龍堂、求龍堂、東京美術) 荒俣宏「流線型の女神」「不思議のアールデコ」「二十世紀イリュストレ大全」「ブックス・ビューティフル Ⅱ」(順に牛若丸、みき書房、長崎出…

アール・デコの “ それから ”  G・ルパープ

以前、 “ あの人は今 ” というバラエティ番組がありました。かつての人気者の今を覗き見るという失礼な番組です。考えてみれば、世の “ 流行りすたり ” に比べて人生の方が長いのは芸能界に限らず厄介なことですね。アール・デコのスター達は大流行の後をど…

“ 集めた本を読むわけがない ”

上のタイトルは鹿島茂著「それでも古書を買いました」の見出しです。挿絵本も同様で、コレクターにとってそれらは一種の美術品か西洋骨董であって、決して読書のツールではあリません。もちろん同時代の愛書家たちも読むために高い挿絵本を予約したわけでは…

「愛書家クラブ」という贅沢 ・・・ ディナーも付いてます

出版記念のディナーメニュー / 左2点 「エルネスティーヌ」 、 右2点 「ビリティスの歌・完全版 (ファクシミリ) 」 以前、手に入れた限定私家本に挿絵入りのディナーメニューが付いていて不思議に思ったことがあります。その後 ” エルネスティーヌ ” の上位トリ…

" 召喚 " されたルネッサンス美女たち    「バーデンの浴場」G.バルビエ

上段 : バルビエ挿絵「バーデンの浴場」/ 下段 : 左3点 クラナッハ、右端 ラファエロバルビエのファイルには時空の異なるたくさんの様式がストックしてあったに違いありません。テキストに合わせて自由に様式を選び、イメージのおもむくままにバルビエワール…

挿絵本を創るもう一人のアーティスト

ペア画像の左が原画、右が挿絵。 上段から「誘惑者」、「ウルスラ・ミルーエ」、「愛のしずく」。 原画 A.E.マルティ アール・デコ挿絵本の魅力の一つは、挿絵が印刷ではなくポショワール、エッチング、リトグラフといったいわゆる版画であることです。中でもポショ…

「子供のための8つのシャンソン」             A.E.マルティ

#アールデコ #マルティ #楽譜集 #製薬会社のノベルティ かわいいオマケですね。 この作品は子供向け薬用シロップの販売促進用に作られた歌曲集です。すでに知られていた8つの詩にオリジナルの曲がつけられています。作曲家C.A.P.リュィサンは調べてみてもあ…

異界の演出家 G.バルビエ

上段 影のない世界の人々 「艶なる宴」 下段 不思議なクリーチャーたち 「バーデン - バーデンの湯治場」 バルビエの描く世界に光と影はありません。いや光は確かに存在するのですが、強く射して影を作ることはなくあたりを漂うかのようです。そして絢爛たる色彩…

もう一人のビリティス 「ビリティスの歌・完全版」 G.バルビエ

アールデコ挿絵本の女王「ビリティスの歌」に別バージョンが存在することは、ファクシミリ版(復刻版)の案内メールで初めて知りました。 で、2週間がかりで送られてきた「ビリティスの歌・完全版」(ファクシミリ)を手に取った印象はというと「とてもチャ…

挿絵本のラスボス現る⁉ 「ビリティスの歌 真正・完全版」G.バルビエ

全世界が鎖国している中、商売熱心な古書店はWebカタログをいつにもまして頻繁に配信してきます。店を閉めている分ネットで頑張ろうという思惑でしょうが、その割に値段はあまり下げていないのがフランスらしいところです。 そんな中、稀少本のファクシミリ…

世渡り上手なアール・デコの寵児 「マズリパタンの王様」U.ブルネレスキ

古書の世界で「アール・デコ挿絵本」は定着した呼び名ですが、必ずしも「名」が「体」を表しているわけではありません。二大巨匠であるバルビエとマルティは流行としてのアール・デコスタイルを超えた独自の画風をつらぬきました。また、マルティの最後の挿…

バブルの甘い香り「香水のロマンス」G.バルビエ

時節柄、不要不急の外出を自粛する週末は浮世ばなれした挿絵本でも眺めて過ごしますかね。考えてみれば豪華挿絵本こそ「不要不急」の最たるもので、なくても日常生活には何ら不都合はありません。不要不急で限りなく美しいものは世の中によほど余裕(心かお…

素手で楽しむ「ビリティスの歌」G.バルビエ

コレクターで富裕層でもあるあなたが、ある日アール・デコ挿絵本の最高峰「ビリティスの歌」を買おうと思い立ちます。買うのは難しくありません。このクラスの超高価本は意外によく市場に出ます。現に今も560万で市場に出ています。 ただし買う前に必ず高断…

アールデコ挿絵本の「オマケ」

海外の古書店とつき合っていると、それぞれのお国柄が感じられて面白いです。 スイスやドイツの店は問い合わせのレスポンスも早く発送の手際もいいですが、スイスは郵送料が高くドイツは輸送の日数が不安定です。一方フランスはというと輸送の信頼性は高いで…

木口木版の暗闇 「わが友の本」A.E.マルティ

なんだか横溝正史のパロディみたいなタイトルになってしまいました。木口木版は木の切り口(年輪の見える方)を使った版画です。細かい表現が可能なうえ、活字と組んで製版できるので挿絵印刷に広く使われました。一方、高級挿絵本ではポショワール彩色の輪…

プロヴァンスの光と風 「風車小屋だより」 A.E.マルティ

マルティの「風車小屋だより」はアール・デコ挿絵本としてはめずらしく版を重ね、総数は約一万部に上りました。ほとんどが数百から多くても二千部程度で出版される挿絵本の中では、例外的な多さです。 それでもイメージが落ちることはなく、逆に数をこなすこ…

エノテカの「ワイン閣下」C.マルタン

午後、遅めのランチを取りながらふと壁を見ると、なんと「ワイン閣下」がいらっしゃるではないか!以前からよく来ているのに、あまりにインテリアにとけ込んでいるせいか永らく気づきませんでした。 「ワイン閣下」はワイン商社の二コラ社が発行した販促本で…

ブエノスアイレスのバルビエ 「ブレオ氏の出会い」G.バルビエ

コレクターにはよく知られたことですがバルビエの挿絵本はお高いです。本日もパリの古書店から「ビリティスの歌」が560万で出ています。 妖しくも美しいが一度ハマったら身の破滅というところは禁止薬物と変わりません。 もし、健全な一般人であるあなたが安…

青い「青い鳥」 A.E.マルティ

令和元年の展覧会めぐり、〆は鹿島茂コレクション「アール・デコの造本芸術」展へ。 日比谷図書文化館というジミな会場のせいか、週末というのに人影はまばら。でも内容は愛好家にとってこの上ない展覧会でした。 最大の収穫はバルビエの「ビリティスの歌」…