青い鳥

アール・デコ挿絵本の魅力を思いつくまま

「アール・デコ挿絵本」の本

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鹿島茂「バルビエ X ラブルール」「モダン・パリの装い」「アール・デコの挿絵本」(順に求龍堂求龍堂東京美術)

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荒俣宏「流線型の女神」「不思議のアールデコ」「二十世紀イリュストレ大全」「ブックス・ビューティフル Ⅱ」(順に牛若丸、みき書房、長崎出版、ちくま文庫)

書店のアートコーナーにはミュッシャやバルビエの画集はありますが、挿絵本について書かれたものはあまりありません。そんな中で早くからアール・デコ挿絵本の魅力を発信してきた先駆者が鹿島茂荒俣宏両氏です。

「バルビエ X ラブルール」と「モダン・パリの装い」は、もう一冊の「グランヴィル」と共に美術展の公式図録兼書籍として出版されました。それぞれにバルビエ、ラブルールそしてルパープ、マルタン、マルティのファッションプレートや挿絵本が解説と共に紹介されています。鹿島氏のことですから書誌も丁寧で、コレクターの参考書としては最適ですが、残念ながら内容は氏の所蔵品に限られています。バルビエでは秘密の私家版「ビリティスの歌・完全版」や、遺作となってルパープが補った「アフロディーテ」は含まれていません。またマルティでは挿絵本62点の内36点が紹介されています。

アール・デコの挿絵本」はタイトル通りこのジャンルのブックデザインや造本の作法についての解説書で、コレクター必携です。

荒俣氏の著作はいずれも知の巨人らしく広がりのある内容で、“ へー、こんな画家もいるんだ ! ! ” と驚かされます。ただし話をまとめて整理する方向の鹿島本とは違いレファレンスにはあまり向きません。読んで驚き楽しむのに最適です。「不思議のアールデコ」は画像中心、「ブックス・ビューティフル Ⅱ」はテキスト中心で、他は画像 + テキストの構成となっています。

なおごく一部ですが、両氏ともに挿絵の技法については、多色木版をポショワールとしたりポショワールを写真製版とする等の混乱が見られます。こればかりは奥付け以外には資料もなく、ルーペで睨んで判断するしかありません。このブログで過去に紹介した中にも、自分自身疑問に思うこともありますが他の確証もなくそのままにしています。まあ少しずつ探っていくのも楽しみではありますが。