青い鳥

アール・デコ挿絵本の魅力を思いつくまま

産院の A · E · マルティとG · ルパープ

「現代育児学の問題と諸相」1943年刊 上の画像はアールデコ挿絵本の中でもかなり珍しい作品です。といっても希少というわけではありません。無記番なのでかなりの部数が発行されたはず。珍しいのはその内容で、なんと出産と育児学、それも内容からして家庭向…

" 食べかた " 二編 須賀敦子と塩野七生から

上段 塩野七生「男たちへ」/ 須賀敦子「コルシア書店の仲間たち」 中段 ルキノ・ヴィスコンティ「山猫」アラン・ドロンとクラウディア・カルディナーレ 下段 レナウンダーバンCM www.youtube.com 須賀敦子はエッセー「コルシア書店の仲間たち」の中で、普段付き…

" トリエステ " 二編

一編は「トリエステの坂道」須賀敦子、片や「トリエステ・国境の町」塩野七生。いずれも数十ページの短い随筆ですが、タイトルに見られる二人の視点の違いは象徴的です。須賀敦子と塩野七生はどちらもイタリアに学び、書き、イタリア人を夫に持ちました。し…

キングスマン:ファースト・エージェント 王道スパイアクション、マシュー・ヴォーン風味

8 コロナで、おあずけを食っていたスパイアクション映画二作「キングスマン : ファースト・エージェント」と「007 /ノー・タイム・トゥ・ダイ」が昨年末にようやく公開。大いに楽しめたのは007より「キングスマン : ファースト・エージェント」のほうでした…

和田誠がいっぱい!

会場に一歩足を踏み入れると、まさに和田誠がいっぱい。 グラフィックデザインだから、たくさんあっても壁に貼ればなんとか収まるのか!と、変なことに感心しながら回りました。 見終わると、いつもの展覧会とはちがう、何やらずっしりとした感慨が・・・ボ…

UNIQUE AU MONDE " 一点もの " 物語 そのⅡ

ジェラール・ドゥーヴィル著、A・E・マルティ挿絵「誘惑者」1927年、ラテンアメリカ愛書家協会刊 【 存在感 】 マーブル紙張りのスリップケースに収まる大ぶりの一冊。ブルーの総モロッコ装にはタイトルの箔押しすらありません。高さ30cm幅8cm、ただならぬ存…

懐かしい未来デザイン in 大谷記念美術館

令和3年の展覧会めぐり、〆は大谷記念美術館の喜多俊之展。いつもはボローニャ国際絵本展などでおなじみの美術館で、企業イメージの強いプロダクトデザインの展覧会というのがちょっと不思議。 喜多俊之は日本とイタリアで活躍するプロダクトデザイナーです…

" 細野観光 " の観光客

カメラ目線で前髪パッツンの男の子。このモノクロ写真をポスターに選んだ時点で、展覧会「細野観光」のプロモーションは大成功したしたようなもんです。だって、人口のボリュームゾーンたる団塊のジジババたち数千万人は、みんな自分のアルバムをのぞき込ん…

UNIQUE AU MONDE " 一点もの " 物語

ド・ビラン著、A.E.マルティ挿絵「愛のしずく」1954年、著者刊。 結局、蔵書自慢になりますがなにとぞご容赦を・・・ さて、アール・デコ挿絵本の多くは限定出版で、一冊ごとに「記番」つまりシリアルナンバーが振られています。とはいっても例えばマルティ…

「アール・デコ挿絵本」の本 Ⅱ フジタとマルティ

画像左から「藤田嗣治と愛書都市パリ」「藤田嗣治 本の仕事」「Marty! Marty! 1, 2」 挿絵本に限らないでしょうが、コレクションの最終盤では色々なことが起こります。テンパイ状態(あと一点)からなかなか最後の一作品に行き当たらなかったり、未知の作品が…

" SASSA YO YASSA 日本の踊り "           ベルンハルト・ケラーマン 

明治41年の夏、一人の作家が丹後の宮津を訪れている。古来宮津は、都の海への玄関口として栄えたが、当時もその面影は色濃く残っていた。作家はよほどこの地が気に入ったものと見えて暫く滞在し紀行文を残している。 と、松本清張風に始めてみましたが、あと…

年代物の耳とオーディオ

32年ぶりにオーディオのアンプを交換しました。ここしばらく音楽から遠ざかってるなあ、システムの音のせいか?あるいは自分の耳の劣化かな?とチェックをかけたところ、年代物のアンプが原因と判明した次第です(もっと年代物の耳のほうはまだ大丈夫 !? …

「 装飾は罪悪である 」アドルフ・ロース

上段:カフェ・ムゼウム外観 / 下段左から:ロースハウス階段、ヴィラ・ミューラー(2点)、ヴィラ・カルマ(2点) 芸術家の言葉は額面通り受け取れないものが多いですね。アドルフ・ロースは20世紀初頭ウィーンで活躍した建築家、インテリアデザイナーで…

ポショワールの謎 その2

上段 : ピエール・ド・ロンサール「マリアの恋歌」マルティ挿絵 / 下段 : 挿絵の別刷りと試し刷り二点。 前回、挿絵のカラー部分はポショワールと木口木版の組み合わせらしいと見当をつけました。今回は線画が刷られたグラシン紙を見てみましょう。それにし…

ポショワールの謎 その1

下段左から、刷り上がり、輪郭線のスミ版、色版の試し刷り アールデコ挿絵本の大きな魅力はポショワールという独特の彩色法です。1910年頃に始まり1950年代には消滅してしまいました。ただこの技法、詳しいことがあまりわかっていません。仕組みは簡単で、要…

昭和レトロ “ 知らないのに懐かしい ”

上段は西武園ゆうえんち「夕日の丘商店街」、下段は昭和レトロの構成アイテムたち 昭和レトロが人気だそうです。古い家電やホーロー看板がネットで取引され、西武園ゆうえんちは昭和レトロのテーマパーク「夕日の丘商店街」をオープンしたとのこと。ホントに…

フランソワ・ポンポン展 瓦屋根の下に集まった動物たち

アールデコのインテリアによく似合う優美なシロクマや滑らかなフクロウの彫像には見覚えがありましたが、作家の名は知りませんでした。パンフレットでその名をフランソワ・ポンポンと知ったときもシャレたペンネーム ? と思ったくらいです。 アールデコのア…

「アール・デコ挿絵本」の本

鹿島茂「バルビエ X ラブルール」「モダン・パリの装い」「アール・デコの挿絵本」(順に求龍堂、求龍堂、東京美術) 荒俣宏「流線型の女神」「不思議のアールデコ」「二十世紀イリュストレ大全」「ブックス・ビューティフル Ⅱ」(順に牛若丸、みき書房、長崎出…

装丁されたタイムマシン 中井英夫“とらんぷ譚”

画像は幻想小説の鬼才、中井英夫の “ とらんぷ譚 ” 四部作です。1973年(昭和48年)から1978年(昭和53年)にかけて出版されました。 スリップケースに収められたハードカバーはサテンクロス装、箔押し。本文二色刷り。外箱、口絵、トビラ、さらには各短編のタイ…

名探偵とアール・デコ

映画やTVドラマでアール・デコのファッションを目にすることはよくあります。人気ドラマシリーズ「ダウントン・アビー」にも美しい衣装がたくさん登場して目を楽しませてくれました。一方、アール・デコのインテリアはあまり見かけることはありません。参考…

近代文学を彩る口絵 鏑木清方と鰭崎英朋

左二点「月に立つ影」の口絵と原画 ( 鰭崎英朋 ) 。右二点「青春」の口絵と原画 ( 梶田半古 ) 。(「鏑木清方と鰭崎英朋」太田記念美術館刊より) 都知事の厳命で国公立の美術館が軒並み休館する中、ひっそりと開いている太田記念美術館を訪れました。鏑木清方…

A・E・マルティ 挿絵本ランキング BEST10

第二段左から「フローラの王冠」「誘惑者」「エルネスティーヌ」/ 第三段左から「雅歌」「エローとレアンドル」「君と僕1939年版」/ 第四段左から「青い鳥」「風車小屋便り」「愛のしずく」「シルヴィー」 挿絵本に限らずですが、一人のアーティストの全作品…

大型連休は “ コッペリア ” 三昧

左は “ カンパニーDECOBOCO ”、右は “ 新国立劇場バレエ団 ” の公演パンフレット マルティ挿絵本のBEST10を予定していましたが、急遽新ネタを挟みます。 緊急事態発令中の大型連休は “ コッペリア ” 三昧でした。新国立劇場バレエ団は予定していたローラン・…

A・E・マルティ 挿絵本ランキング (その5 )

〈 印刷による挿絵本 〉 上段左から二点「聖書物語」、上段右と下段左「愛の詞華集」、下段中と右「現代育児学の諸相」 「印刷」とひとくくりにしていますが、ジャンルは子供向けの絵本、実用書、そして文学作品とさまざまです。面白いのは子供向けの絵本や…

A・E・マルティ 挿絵本ランキング (その4 )

〈 第3ゾーン モノクローム版画挿絵本 〉 上段左から「神話の情景」「エローとレアンドル」「エルネスティーヌ」/ 下段左から「その日限り」「愛のしずく」「サッフォー」 ここにはサッカーワールドカップで言うところの “ 地獄のグループ ” さながらに、銅…

A・E・マルティ 挿絵本ランキング (その3 )

〈 第2ゾーン ポショワール挿絵本 / 2000部未満 〉 上段左から「誘惑者」「フローラの王冠」「雅歌」/ 下段左から「エレーヌへのソネット」「アフロディテ」「シルヴィ」 ここは高級挿絵本のゾーンです。挿絵の質と量はもちろんですが、タイプフェース(活字…

A・E・マルティ 挿絵本ランキング (その2 )

〈 第1ゾーン ポショワール挿絵本 / 2000部以上 〉 上段左から「青い鳥」「君と僕 1939年版」「七宝とカメオ」 / 下段左から「風車小屋便り」「ミュッセ作品集」「ペレアスとメリザンド」 ここは挿絵本のボリュームゾーンです。多くの出版社がフランス文学の…

A・E・マルティ 挿絵本ランキング (その1 )

シャルル・ド・ゴール空港で足止めをくっていた一冊が三週間ぶりに届きました。待望の一冊です。これでめでたく、A.E.マルティの挿絵本59点をすべて手にすることができました。引き続きの目標は、トリアージや装丁によってコレクションを入れ替えていくとい…

熊川哲也 Kバレエ カンパニー “ 白鳥の湖 ”

画像はKバレエ カンパニー公演パンフレット Kバレエ カンパニー3月の公演は「白鳥の湖」でした。あまりに王道のレパートリーですが、それだけに新しい発見もあって楽しめました プリンシパルソリスト小林美奈が、清楚というよりむしろ妖艶なオデットとひたす…

アール・デコの “ それから ”  G・ルパープ

以前、 “ あの人は今 ” というバラエティ番組がありました。かつての人気者の今を覗き見るという失礼な番組です。考えてみれば、世の “ 流行りすたり ” に比べて人生の方が長いのは芸能界に限らず厄介なことですね。アール・デコのスター達は大流行の後をど…