青い鳥

アール・デコ挿絵本の魅力を思いつくまま

ポショワール

UNIQUE AU MONDE " 一点もの " 物語 そのⅡ

ジェラール・ドゥーヴィル著、A・E・マルティ挿絵「誘惑者」1927年、ラテンアメリカ愛書家協会刊 【 存在感 】 マーブル紙張りのスリップケースに収まる大ぶりの一冊。ブルーの総モロッコ装にはタイトルの箔押しすらありません。高さ30cm幅8cm、ただならぬ存…

ポショワールの謎 その2

上段 : ピエール・ド・ロンサール「マリアの恋歌」マルティ挿絵 / 下段 : 挿絵の別刷りと試し刷り二点。 前回、挿絵のカラー部分はポショワールと木口木版の組み合わせらしいと見当をつけました。今回は線画が刷られたグラシン紙を見てみましょう。それにし…

ポショワールの謎 その1

下段左から、刷り上がり、輪郭線のスミ版、色版の試し刷り アールデコ挿絵本の大きな魅力はポショワールという独特の彩色法です。1910年頃に始まり1950年代には消滅してしまいました。ただこの技法、詳しいことがあまりわかっていません。仕組みは簡単で、要…

A・E・マルティ 挿絵本ランキング BEST10

第二段左から「フローラの王冠」「誘惑者」「エルネスティーヌ」/ 第三段左から「雅歌」「エローとレアンドル」「君と僕1939年版」/ 第四段左から「青い鳥」「風車小屋便り」「愛のしずく」「シルヴィー」 挿絵本に限らずですが、一人のアーティストの全作品…

A・E・マルティ 挿絵本ランキング (その3 )

〈 第2ゾーン ポショワール挿絵本 / 2000部未満 〉 上段左から「誘惑者」「フローラの王冠」「雅歌」/ 下段左から「エレーヌへのソネット」「アフロディテ」「シルヴィ」 ここは高級挿絵本のゾーンです。挿絵の質と量はもちろんですが、タイプフェース(活字…

A・E・マルティ 挿絵本ランキング (その2 )

〈 第1ゾーン ポショワール挿絵本 / 2000部以上 〉 上段左から「青い鳥」「君と僕 1939年版」「七宝とカメオ」 / 下段左から「風車小屋便り」「ミュッセ作品集」「ペレアスとメリザンド」 ここは挿絵本のボリュームゾーンです。多くの出版社がフランス文学の…

A・E・マルティ 挿絵本ランキング (その1 )

シャルル・ド・ゴール空港で足止めをくっていた一冊が三週間ぶりに届きました。待望の一冊です。これでめでたく、A.E.マルティの挿絵本59点をすべて手にすることができました。引き続きの目標は、トリアージや装丁によってコレクションを入れ替えていくとい…

お薦めの一冊「七宝とカメオ」A・E・マルティ

たまたまブログを見たアンティーク好きの旧友からメールで 「アール・デコ挿絵本なるものを一冊手に入れてみたいがお薦めは ? 」とのこと。ウーン一冊だけとなるとこれは意外に難しい ! 手始めはポショワール彩色の挿絵本がいいでしょう。なんといってもアー…

愛書家たちの名残り

上段左 / 「風車小屋便り」と絵はがき。上段右 / 「聖書物語」とクリスマスカード。下段左 / 「誘惑者」。下段右 / 綴じ込まれていたジェラール・ドゥーヴィルからラ・ロシュフコー伯爵への書簡。 挿絵入りのミュッセ作品集を手に入れたときのこと。大きな国…

「愛書家クラブ」という贅沢 ・・・ ディナーも付いてます

出版記念のディナーメニュー / 左2点 「エルネスティーヌ」 、 右2点 「ビリティスの歌・完全版 (ファクシミリ) 」 以前、手に入れた限定私家本に挿絵入りのディナーメニューが付いていて不思議に思ったことがあります。その後 ” エルネスティーヌ ” の上位トリ…

“ ミュッセの主人公 ”  イリュストラシオン1931年クリスマス号

上段 : 原画(オフセット印刷) / 下段 : ポショワールによる挿絵 ミュッセ全集ピアッツァ社の「マルティ挿絵版ミュッセ全集」が刊行される直前、絵入り新聞イリュストラシオンの1931年クリスマス号に「ミュッセの主人公について」という記事が載りました。タ…

アールデコを彩った " ポショワール " その2

ポショワール+フォトタイプ印刷 : 左から「ある子供の物語(オールテキスト部分)」「シルヴィー」「至高の青春 & ある貧しい将校」 ポショワール+ヘリオグラビア印刷 : 左から「静観詩集」2点、「ある子供の物語(カット部分)」 ポショワール+線画凸版?…

アールデコを彩った " ポショワール " その1

ポショワール+木口木版(スミ版): 左から「フローラの王冠」「ミュッセ全集」2点 ポショワール+木口木版(色版) : 左から「雅歌」「エレーヌのソネット」「カサンドルの恋歌」 ポショワール+エッチング : 「誘惑者」3点とも。 ポショワールはアールデコ…

知られざるアーティスト          アンドレ・ドマン「悪の華」

今でこそファンの多いアールデコ挿絵本ですが、日本で知られはじめたのはせいぜいここ十数年ではないでしょうか。 鹿島茂氏は1993年に出した「バルビエコレクションⅡ ビリチスの歌」で自著を「ビリチスの歌(バルビエ挿絵)の初紹介」と述べています。また荒俣宏氏…

挿絵本を創るもう一人のアーティスト

ペア画像の左が原画、右が挿絵。 上段から「誘惑者」、「ウルスラ・ミルーエ」、「愛のしずく」。 原画 A.E.マルティ アール・デコ挿絵本の魅力の一つは、挿絵が印刷ではなくポショワール、エッチング、リトグラフといったいわゆる版画であることです。中でもポショ…

異界の演出家 G.バルビエ

上段 影のない世界の人々 「艶なる宴」 下段 不思議なクリーチャーたち 「バーデン - バーデンの湯治場」 バルビエの描く世界に光と影はありません。いや光は確かに存在するのですが、強く射して影を作ることはなくあたりを漂うかのようです。そして絢爛たる色彩…

光と影の巨匠 A.E.マルティ

上段「逆光の幸福感」/ ウルスラ・ミル―エ、子供の物語、ミュッセ全集、シルヴィー、エルネスティーヌ 下段「美しい夜の情景」/ 青い鳥、アフロディテ、雅歌、シルヴィー、サッフォー オークションを見ていると、どうやら日本でのアール・デコ挿絵本の一番人…

ファッションプレートになった       「お菊さん」と「お梅さん」 S.ソヴァージュ

シルヴァン・ソヴァージュはなかなか器用な画家だったようです。「青髭と七人の妻」に見られる力強くユーモラスな木版画がよく知られていますが、ロスタン全集の「鷲の子」では小さなカットを手堅くこなして、フルページ挿絵を担当したマルティの引立て役に廻って…

世渡り上手なアール・デコの寵児 「マズリパタンの王様」U.ブルネレスキ

古書の世界で「アール・デコ挿絵本」は定着した呼び名ですが、必ずしも「名」が「体」を表しているわけではありません。二大巨匠であるバルビエとマルティは流行としてのアール・デコスタイルを超えた独自の画風をつらぬきました。また、マルティの最後の挿…

プロヴァンスの光と風 「風車小屋だより」 A.E.マルティ

マルティの「風車小屋だより」はアール・デコ挿絵本としてはめずらしく版を重ね、総数は約一万部に上りました。ほとんどが数百から多くても二千部程度で出版される挿絵本の中では、例外的な多さです。 それでもイメージが落ちることはなく、逆に数をこなすこ…

エノテカの「ワイン閣下」C.マルタン

午後、遅めのランチを取りながらふと壁を見ると、なんと「ワイン閣下」がいらっしゃるではないか!以前からよく来ているのに、あまりにインテリアにとけ込んでいるせいか永らく気づきませんでした。 「ワイン閣下」はワイン商社の二コラ社が発行した販促本で…

ブエノスアイレスのバルビエ 「ブレオ氏の出会い」G.バルビエ

コレクターにはよく知られたことですがバルビエの挿絵本はお高いです。本日もパリの古書店から「ビリティスの歌」が560万で出ています。 妖しくも美しいが一度ハマったら身の破滅というところは禁止薬物と変わりません。 もし、健全な一般人であるあなたが安…

青い「青い鳥」 A.E.マルティ

令和元年の展覧会めぐり、〆は鹿島茂コレクション「アール・デコの造本芸術」展へ。 日比谷図書文化館というジミな会場のせいか、週末というのに人影はまばら。でも内容は愛好家にとってこの上ない展覧会でした。 最大の収穫はバルビエの「ビリティスの歌」…