青い鳥

アール・デコ挿絵本の魅力を思いつくまま

A・E・マルティ 挿絵本ランキング (その5 )

〈 印刷による挿絵本 〉

f:id:kenta1930:20210330170553j:plain
f:id:kenta1930:20210330171209j:plain
f:id:kenta1930:20210330170515j:plain
f:id:kenta1930:20210330170432j:plain
f:id:kenta1930:20210330171145j:plain
f:id:kenta1930:20210330171403j:plain

上段左から二点「聖書物語」、上段右と下段左「愛の詞華集」、下段中と右「現代育児学の諸相」

 

「印刷」とひとくくりにしていますが、ジャンルは子供向けの絵本、実用書、そして文学作品とさまざまです。面白いのは子供向けの絵本や育児、教育関係がとても多いことです。作風からおのずとそうなったのでしょうが、マルティの意向もあったに違いありません。絵本の「カリスト」などはマルティ自身がテキストを書いています。

ノミネートは、絵本からは水彩原画をオフセットで美しく再現した「聖書物語」。文学からはピエール・ド・ロンサールの「愛の詞華集」。フォトタイプ印刷の挿絵ですがオリジナルのリトグラフがよく再現されています。そして実用書からはカラーグラビアによる「現代育児学の諸相」。育児学の専門書ですがマルティの母子像が傑作です。なおこの本にはルパープの別丁挿絵も付いていて、実用書にしてはずいぶん挿絵が充実しています。以上3点をノミネート。

ノミネート以外にも、絵本では見開き2ページにわたる本文組み込み挿絵が見事な「天地創造」、文学では本文7ページの小品ながらシルエットの挿絵が印象的な「傷心」など味わい深い作品があります。どちらもカラー凸版の力強い挿絵です。 

 

〈 残念な一冊 カリスト

予算不足からかモノクロになっています。この作品の場合、モノクロの方が味わい深いということもありません。彼自身のテキストで、原画も構成も良いだけにやはり残念です。

次回はいよいよBEST10を!

(つづく)