青い鳥

アール・デコ挿絵本の魅力を思いつくまま

近代文学を彩る口絵 鏑木清方と鰭崎英朋

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 左二点「月に立つ影」の口絵と原画 ( 鰭崎英朋 ) 。右二点「青春」の口絵と原画 ( 梶田半古 ) 。(「鏑木清方と鰭崎英朋」太田記念美術館刊より)

 

都知事の厳命で国公立の美術館が軒並み休館する中、ひっそりと開いている太田記念美術館を訪れました。鏑木清方の口絵というテーマに惹かれてのことです。初日というのに人影はまばら。都知事の逆鱗に触れないよう、ひたすら身を低くしている風情にも見えて可笑しいです。

アールデコ挿絵本の時代からちょうど30年をさかのぼる明治半ば、浮世絵技法による木版の書籍口絵が流行りました。本編よりもこちらが目当てで購入する人も多かったようです。テキストの再解釈などという小理屈を軽く無視した美人画がほとんどで、中には武内桂舟の美人画口絵付き「実用料理法」(日曜百科全書)などとという本まであります。

面白いのはアールデコ挿絵本と同様に、版画職人が画家の指示をなぞるだけではなく、独自のアレンジを加えて効果的な木版画に仕上げていることです。

テキストの色々なシーンを勝手に継ぎはぎして一枚の口絵にする画家がいるかと思えば、原画の着物の柄を全く描き変えてしまう木版職人もいるという具合で、作家、画家、職人の三者がユルーい関係の中でそれぞれの持ち分を発揮しています。著者と画家が切り結ぶような近代西洋の挿絵本を見慣れた目には、お互いのオリジナリティに頓着しないこのユルさは新鮮です。江戸文化の名残でしょうか。

 

今日の一冊 : 太田記念美術館鏑木清方と鰭崎 英朋近代文学を彩る口絵」