青い鳥

アール・デコ挿絵本の魅力を思いつくまま

“ ミュッセの主人公 ”  イリュストラシオン1931年クリスマス号

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上段 : 原画(オフセット印刷)  / 下段 : ポショワールによる挿絵   ミュッセ全集

ピアッツァ社の「マルティ挿絵版ミュッセ全集」が刊行される直前、絵入り新聞イリュストラシオンの1931年クリスマス号に「ミュッセの主人公について」という記事が載りました。タイミングといい、マルティの挿絵が貼り込まれていることといい、出版に先駆けたプロモーション記事であることは間違いありません。

面白いのは掲載された15点の挿絵で、見慣れたポショワール挿絵とは微妙に違っています。カラーオフセット印刷で、どうやら原画から製版したもののようです。結びには「これらのマルティ作品には、まもなく出版されるミュッセ全集でお目にかかれる」と記されています。

出版されたポショワール挿絵を見ると、忠実に版画化されているものもある一方、大胆に改変されているものもあります。Don Paez などは輪郭も楕円に変わり、背景の建物もシルエットになっていて明らかに挿絵としての効果は高くなっています。

これらの原画が下絵ではなくマルティの最終稿だとすると、職人たちは原画を尊重しながらも、自らのセンスと技量で挿絵をさらに魅力的にしていたことが分かります。原画から直接写真製版する現代とは違い、この時代は画家と版画職人というアーティスト同志のコラボレーションが存在したのでしょう。

ほんの90年前のことですが、現代とは違う出版文化が生きていたのは興味深いですね。 

 

今日の2冊 : イリュストラシオン1931年クリスマス号 / アルフレッド・ド・ミュッセ全集1932~36年、ピアッツァ社刊。