" 召喚 " されたルネッサンス美女たち 「バーデンの浴場」G.バルビエ
上段 : バルビエ挿絵「バーデンの浴場」/ 下段 : 左3点 クラナッハ、右端 ラファエロ
バルビエのファイルには時空の異なるたくさんの様式がストックしてあったに違いありません。テキストに合わせて自由に様式を選び、イメージのおもむくままにバルビエワールドを創り上げたのでしょう。
「ビリティスの歌」ではギリシャ、「ミイラ物語」ではエジプト、「危険な関係」や「艶なる宴」ではロココ、さらにはシノワズリーやジャポニズムまで。時代も国も自由自在です。それにしても一度バルビエの挿絵で「お菊さん」を見てみたかったなあ。
今日の一冊は、今では忘れられた作家ルネ・ボワレーヴの「バーデンの浴場」です。ここに召喚されているのはロココ美女ではありません。ロココ美女は裸になると大抵はしゃぐか、さもなければ寝そべっています。全裸でスックと立ち、見るものが困るようなポーズをとっているのは明らかにルネッサンスの美女たちです。
バルビエのファイルにはラファエロ、ボッティチェリそして何よりクラナッハが数多くストックされていたものと思われます。
ジョルジュ・クレス社から出版されたバルビエの挿絵本3点はいずれも単色や2~3色の板目木版画ですが、ポショワールとはひと味違う力強さが魅力です。中でもこの「バーデンの浴場」は美女や不思議なクリーチャーが数多く登場して楽しめます。
今日の1冊:ルネ・ボワレーヴ著「バーデンの浴場」1921年、ジョルジュ・クレス社刊。