青い鳥

アール・デコ挿絵本の魅力を思いつくまま

異界の演出家 G.バルビエ

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 上段 影のない世界の人々 「艶なる宴」

 下段 不思議なクリーチャーたち 「バーデン - バーデンの湯治場」

 

バルビエの描く世界に光と影はありません。いや光は確かに存在するのですが、強く射して影を作ることはなくあたりを漂うかのようです。そして絢爛たる色彩の中にロココ美女や美女よりもなまめかしい青年、さらには不思議なクリーチャー達を浮かび上がらせています。

軽妙で豪奢で時にユーモラスなこの登場者達は、あまり生命感というものを感じさせません。影のない世界の住人だからでしょうか。

描かれるモチーフは常に様式美に満ちています。きっとバルビエの頭のなかには、古代ギリシャから中世、バロックからロココにいたる様々な意匠がストックしてあるのでしょう。

光と影によるリアリティを消して色彩と様式美で見る人を酔わせるのは現代のテーマパークでもおなじみの手法ですね。バルビエは挿絵本という二次元空間で、見る人を異界に誘うたくさんの傑作を生みだしました。

マルティの女性が、純化されているとはいえ自然の光の中に生きる生身の人間であるのに対し、バルビエの描くチャーミングなロココ美女たちはきっと皆「あやかし」か「もののけ」なのでしょう。

 

 今日の二冊 :  P.ヴェルレーヌ 「艶なる宴」 1928年、ピアッツァ社刊 / 

R.ボワレーヴ 「バーデン - バーデンの湯治場」 1921年、G.クレス社刊