青い鳥

アール・デコ挿絵本の魅力を思いつくまま

“ 集めた本を読むわけがない ”

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上のタイトルは鹿島茂著「それでも古書を買いました」の見出しです。挿絵本も同様で、コレクターにとってそれらは一種の美術品か西洋骨董であって、決して読書のツールではあリません。もちろん同時代の愛書家たちも読むために高い挿絵本を予約したわけではないでしょう。。

しかし挿絵本といえども、テキストを全く知らないでは見る楽しみも半減します。挿絵を楽しめる程度には内容を知っておきたいのがコレクターの本音です。そんな方のために二冊ほどご紹介を。なお原文を読みこなす方は別途ご随意にしていただくこととして・・・

まずは挿絵本の最高峰「ビリティスの歌」です。ここは鹿島氏ご推薦の生田耕作訳「ビリチスの唄」サバト館刊(社名の漢字は変換できないのでカナで)。優美なスリップケース、仮綴じ風の装丁、おまけにノトールの挿絵付きでコレクター心をくすぐります。名訳と評判の高い口語体は、拾い読みでも十分に楽しめます。

もう一冊、“ テキストは知りたいが労は惜しむ ” というコレクターにぴったりな一冊を。鹿島茂著「フランス文学は役に立つ ! 」NHK出版。17世紀から現代までの主なフランス文学作品を取り上げて、あらすじ、講義、現在の視点、翻訳書ガイド、おさえておきたいフレーズの仏日対訳まで含めてなんと1作品わずか10ページ。鹿島先生さすがの離れ業です。挿絵本でお馴染みの「クレーヴの奥方」「マノン・レスコー」など24作品が取り上げられています。完読した人の少ない「失われた時を求めて」も入っているので、一冊読めばにわかフランス文学通を気取ることも可能です。

挿絵本のテキストには、今も変わらず読み継がれている「風車小屋便り」や「青い鳥」がある一方で、今では忘れ去られた作家ルネ・ボアレーヴやジョルジュ・デュアメルの作品もあります。アナトール・フランスも手頃な翻訳本が見つからず「我が友の書」などは大正12年発行の小冊子を手に入れて読みました。それもまた挿絵本の楽しみのひとつかも知れません。

 

今日の2冊 : ピエール・ルイス著、生田耕作訳「ビリチスの唄」1986年、サバト館刊 / 鹿島茂著「フランス文学は役に立つ!」2016年、NHK 出版刊。