青い鳥

アール・デコ挿絵本の魅力を思いつくまま

バブルの甘い香り「香水のロマンス」G.バルビエ

 

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 時節柄、不要不急の外出を自粛する週末は浮世ばなれした挿絵本でも眺めて過ごしますかね。考えてみれば豪華挿絵本こそ「不要不急」の最たるもので、なくても日常生活には何ら不都合はありません。不要不急で限りなく美しいものは世の中によほど余裕(心かお金、またはその両方の)がないと生まれないのかもしれません。

あらかじめ100人程度の予約を取って限定豪華本を高額で頒布するなどというビジネスモデルは、20世紀最大のバブル期1920年代だからこそ成り立ったのでしょう。しかし、そうした豪華限定本にもましてアールデコバブルを象徴するのは「ワイン閣下」、「香水のロマンス」の二点の販促本です。

限定本と同様に一流のライターとイラストレーターを使い、紙や印刷も上質な販促本を無料で顧客に配布するなどという発想は、流通によほどのお金が回っていないと出てきません。しかも発行元が、それぞれワインと香水というこれまたバブリーな業界・・

今日の一冊はアメリカの香水会社リチャード・ハドナット社が顧客に配布するために制作した挿絵本。リチャード・ル・ガリエンヌの本文、バルビエの挿絵でロココ期フランス、エリザベス朝イギリス、ペルシャ、中国、インドなどの香りにまつわるお話を掲載しています。ポショワールではなくオフセット印刷ですが、紙やフォントもよく吟味されていて高級な挿絵本になっています。

何より贅沢なのは、これはバルビエ描き下ろしの出版物であるということ。つまり「危険な関係」や「艶なる宴」と同格のバルビエオリジナル作品だということです。

出版されたのは1928年1月。ウォール街発のバブル崩壊が20か月後に迫っていました。

 

今日の一冊 : 「香りのロマンス」 リチャード・ ハドナット社、1928年刊