青い鳥

アール・デコ挿絵本の魅力を思いつくまま

もう一人のビリティス 「ビリティスの歌・完全版」 G.バルビエ

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アールデコ挿絵本の女王「ビリティスの歌」に別バージョンが存在することは、ファクシミリ版(復刻版)の案内メールで初めて知りました。

で、2週間がかりで送られてきた「ビリティスの歌・完全版」(ファクシミリ)を手に取った印象はというと「とてもチャーミング ‼」。

いかめしい「完全版」のタイトルに似合わぬやや小ぶりの版型(24㎝X18㎝)で、バルビエ?の挿絵がミニアチュールのように輝いて見えます。一方レトリーヌ(飾り文字)やテキストのタイポグラフィはとてもあっさりしていて、コラール版「ビリティスの歌」や「コメディの登場人物」のような異界感はありません。あの目まいのするような豪華さはバルビエの挿絵とシュミットのブックデザインの相乗効果だったのかとあらためて気づかされます。

さてこの本の出自は ?  ファクシミリ版に添えられた資料によると、「政治家にしてアカデミーフランセーズの会員であったルイス・バルトゥの蔵書で現在はフランス国立図書館に収められている「記番2」をもとに複製した。」とのこと。またクリスティーズのオークションカタログには「テキストは1926年5月のドゥルオーにおけるオークションにかけられたピール・ルイスの未発表自筆原稿をもとにしたものと思われる。挿絵はジョルジュ・バルビエ、木版はピエール・ブーシェによる。部数は25部、アール・デコ期におけるもっとも稀少な作品である。」とあります。

おそらく事実はその通りなのでしょう。何といっても2008年と2011年、二度にわたってオークションを手がけたクリスティーズの解説です。

しかし、出版社も画家名も伏せられたこの挿絵本が、妖しくも美しい偽書かもしれないと考えるのもロマンがありますね。何しろ当のビリティスがピエール・ルイスの壮大なフェイクなのですから。

 

 今日の一冊:ピエール・ルイス 「ビリティスの歌・完全版」 1929年刊 / ファクシミリ版 マドリッド JAVIER MARTIN SANTOS工房