ファッションプレートになった 「お菊さん」と「お梅さん」 S.ソヴァージュ
シルヴァン・ソヴァージュはなかなか器用な画家だったようです。「青髭と七人の妻」に見られる力強くユーモラスな木版画がよく知られていますが、ロスタン全集の「鷲の子」では小さなカットを手堅くこなして、フルページ挿絵を担当したマルティの引立て役に廻っています。
一方、このピエール ・ ロチ全集の「お菊さん」と「お梅さんの三度目の春」では柔かなタッチで日本の情景を生き生きと描いています。ロングセラーの「お菊さん」はフジタをはじめ多くの画家が挿絵を提供していますが、時には白人女性にしか見えないお菊さんやトロピカルカラーの日本風景が出てきて笑えます。
そんな中ソヴァージュはフランス人の美意識で再構成したJAPONを描いていながら、おそらく浮世絵や写真をよく研究したのでしょう、我々にもあまり違和感を与えません。フォトタイプ印刷 + ポショワール彩色のくすんだトーンも日本情緒の演出に一役買っています。
中でも印象的なのはテキストを象徴する仮表紙で、美しい赤のアクセントがファッションプレートを見るようです。
画像上段が「お菊さん」、下段が「お梅さんの三度目の春」。
今日の二冊 : ピエール ・ ロチ全集「お菊さん」「お梅さんの三度目の春」 1936年、カルマン ・ レヴィ社刊。