一家に一本ピエール・ドゥ・ロンサール 「愛の詞華集」A.E.マルティ
ルネッサンスの宮廷詩人にちなんだ名のバラがあります。毎年この時期に色気のある大輪を惜しげもなく咲かせる名花で、バラファンの間では「一家に一本ピエール・ドゥ・ロンサール」と揶揄される人気品種です。
一方、バラに名を残す詩人の方も本国フランスをはじめ広く親しまれているようで、その作品は挿絵本のテキストとしてしばしば登場します。
中ではマルティの挿絵による豪華な三部作が有名ですが、同じマルティ挿絵のコンパクトな詩集もお勧めです。4000部発行されたシリーズ本の一つで、挿絵もリトグラフから起こしたフォトタイプ印刷ですがオリジナルの風合いはよく再現されています。
恋のとりこになった人々、なかには恋に落ちた暗喩でしょうかキューピッドに踏みつけられた貴族も描かれていて、品のいいユーモアに満ちています。マルティの挿絵はモノクロームになるとひときわ神話的、牧歌的な雰囲気になるのはなぜでしょうね。
その内容にふさわしく美しい装丁本も多いので、手軽ながら魅力的なコレクターズアイテムといえるでしょう。
今日の一冊:ピエール・ドゥ・ロンサール「愛の詞華集」 1953年、フラマリオン書店刊