挿絵本
全世界が鎖国している中、商売熱心な古書店はWebカタログをいつにもまして頻繁に配信してきます。店を閉めている分ネットで頑張ろうという思惑でしょうが、その割に値段はあまり下げていないのがフランスらしいところです。 そんな中、稀少本のファクシミリ…
古書の世界で「アール・デコ挿絵本」は定着した呼び名ですが、必ずしも「名」が「体」を表しているわけではありません。二大巨匠であるバルビエとマルティは流行としてのアール・デコスタイルを超えた独自の画風をつらぬきました。また、マルティの最後の挿…
時節柄、不要不急の外出を自粛する週末は浮世ばなれした挿絵本でも眺めて過ごしますかね。考えてみれば豪華挿絵本こそ「不要不急」の最たるもので、なくても日常生活には何ら不都合はありません。不要不急で限りなく美しいものは世の中によほど余裕(心かお…
アールデアールデコ バブルニッポンの自尊心を大いにくすぐった経済書「ジャパン アズ ナンバーワン」は遠い思い出になってしまいました。 一方、100年以上にわたって日本が世界の頂点に君臨するとてもニッチな分野をご存じですか? 答えは高級限定本の用紙…
アール・デコ期からさかのぼること50年、フランスはリヨンの大ブルジョア紳士が画家を伴って明治初期の日本を訪れています。名はエミール・ギメ。有名なギメ東洋美術館の創始者です。 大ブルジョアに似合わずフットワークも軽く、開国間もない日本を楽しんで…
コレクターで富裕層でもあるあなたが、ある日アール・デコ挿絵本の最高峰「ビリティスの歌」を買おうと思い立ちます。買うのは難しくありません。このクラスの超高価本は意外によく市場に出ます。現に今も560万で市場に出ています。 ただし買う前に必ず高断…
海外の古書店とつき合っていると、それぞれのお国柄が感じられて面白いです。 スイスやドイツの店は問い合わせのレスポンスも早く発送の手際もいいですが、スイスは郵送料が高くドイツは輸送の日数が不安定です。一方フランスはというと輸送の信頼性は高いで…
なんだか横溝正史のパロディみたいなタイトルになってしまいました。木口木版は木の切り口(年輪の見える方)を使った版画です。細かい表現が可能なうえ、活字と組んで製版できるので挿絵印刷に広く使われました。一方、高級挿絵本ではポショワール彩色の輪…
マルティの「風車小屋だより」はアール・デコ挿絵本としてはめずらしく版を重ね、総数は約一万部に上りました。ほとんどが数百から多くても二千部程度で出版される挿絵本の中では、例外的な多さです。 それでもイメージが落ちることはなく、逆に数をこなすこ…
午後、遅めのランチを取りながらふと壁を見ると、なんと「ワイン閣下」がいらっしゃるではないか!以前からよく来ているのに、あまりにインテリアにとけ込んでいるせいか永らく気づきませんでした。 「ワイン閣下」はワイン商社の二コラ社が発行した販促本で…
コレクターにはよく知られたことですがバルビエの挿絵本はお高いです。本日もパリの古書店から「ビリティスの歌」が560万で出ています。 妖しくも美しいが一度ハマったら身の破滅というところは禁止薬物と変わりません。 もし、健全な一般人であるあなたが安…
令和元年の展覧会めぐり、〆は鹿島茂コレクション「アール・デコの造本芸術」展へ。 日比谷図書文化館というジミな会場のせいか、週末というのに人影はまばら。でも内容は愛好家にとってこの上ない展覧会でした。 最大の収穫はバルビエの「ビリティスの歌」…